真空とは?
空気中には、様々なガスが存在し、四方八方に飛び回っています。 そしてたまたま固体表面にやって来たガス分子はある確率で表面に くっついてしまいます。これを吸着といいます。 空気中に存在するガス分子の数が多ければ多い程、つまりガスの圧力が 高ければ高い程、吸着する割合が増えて行くことになります。何らかの方法で試料表面の吸着ガスを取り除き、清浄な表面を作成したとしましょう。 この清浄表面にもいづれガスが吸着し、汚染されて行くわけですから、 表面の物性を研究するためには試料を真空容器中に入れてガス吸着による 汚染を防ぐ必要があります。 では、圧力(真空度)をどのくらいに下げれば、実験を行う間中、清浄表面を 保つことができるでしょうか。
1気圧(約105Pa) のガス1cm3中には約1019個の ガス分子が含まれていますから、10-4Pa では9桁下がって 約1010個の分子が含まれることになります。この真空度では、 ほんの数秒で清浄表面は吸着ガスによってびっしり覆われてしまいます。 真空度がひとけた下がる毎に清浄表面がガスで覆われてしまうまでの時間が ひとけた増えて行きますので、清浄表面を10分保つためには10-7Pa の真空度 (1cm3あたり、 約107個のガス分子を含む)が必要です。 これ以下の真空を 超高真空と呼び、材料表面を調べる上で、 不可欠な条件とされています。ただし、薄膜等の作成にあたっては逆に吸着現象を積極的に利用するわけですから、 103Pa 〜10-4Pa程度の真空度がよく用いられています。
なお、大気の圧力は約105Pa ですが、人工衛星やスペースシャトル の飛んでいるあたりが10-5Pa 程度、 地球と月の中間あたりで10-10Pa 程度、 銀河系間の最もガスの希薄な所は10-20Pa くらいであると 言われています。